デジタル会計監査六法

会計処理に必要な会計基準や実務指針を公開

収益認識に関する会計基準 平成 30 年 3 月 30 日(企業会計基準第 29 号 )

 目 的

1. 本会計基準は、本会計基準の範囲(第 3 項及び第 4 項参照)に定める収益に関する会計 処理及び開示について定めることを目的とする。なお、本会計基準の範囲に定める収益に 関する会計処理については、「企業会計原則」に定めがあるが、本会計基準が優先して適用 される。

2. 平成 30 年 3 月に、本会計基準を適用する際の指針を定めた企業会計基準適用指針第 30 号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という。)が公表されてい る。本会計基準の適用にあたっては、当該適用指針も参照する必要がある。

会計基準

Ⅰ.範 囲

3. 本会計基準は、次の(1)から(6)を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理 及び開示に適用される。 (1) 企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」と いう。)の範囲に含まれる金融商品に係る取引 (2) 企業会計基準第 13 号「リース取引に関する会計基準」(以下「リース会計基準」と いう。)の範囲に含まれるリース取引 (3) 保険法(平成 20 年法律第 56 号)における定義を満たす保険契約 (4) 顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又 は製品の交換取引(例えば、2 つの企業の間で、異なる場所における顧客からの需要 を適時に満たすために商品又は製品を交換する契約) (5) 金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料 (6) 日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第 15 号「特別目的会社を活用した不動産 の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(以下「不動産流動化実務指針」 という。)の対象となる不動産(不動産信託受益権を含む。)の譲渡

4. 顧客との契約の一部が前項(1)から(6)に該当する場合には、前項(1)から(6)に適用され る方法で処理する額を除いた取引価格について、本会計基準を適用する。

Ⅱ.用語の定義

5. 「契約」とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における 取決めをいう。

6. 「顧客」とは、対価と交換に企業の通常の営業活動により生じたアウトプットである財 又はサービスを得るために当該企業と契約した当事者をいう。

7. 「履行義務」とは、顧客との契約において、次の(1)又は(2)のいずれかを顧客に移転する約束をいう。 (1) 別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束) (2) 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパター ンが同じである複数の財又はサービス)

8. 「取引価格」とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む 対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)をいう。

9. 「独立販売価格」とは、財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格を いう。

10. 「契約資産」とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対す る企業の権利(ただし、債権を除く。)をいう。

11. 「契約負債」とは、財又はサービスを顧客に移転する企業の義務に対して、企業が顧客 から対価を受け取ったもの又は対価を受け取る期限が到来しているものをいう。

12. 「債権」とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企 業の権利のうち無条件のもの(すなわち、対価に対する法的な請求権)をいう。

13. 「工事契約」とは、仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、 造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うも のをいう。

14. 「受注制作のソフトウェア」とは、契約の形式にかかわらず、特定のユーザー向けに制 作され、提供されるソフトウェアをいう。

15. 「原価回収基準」とは、履行義務を充足する際に発生する費用のうち、回収することが 見込まれる費用の金額で収益を認識する方法をいう。

Ⅲ.会計処理

1.基本となる原則

16. 本会計基準の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又は サービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識する ことである。

17. 前項の基本となる原則に従って収益を認識するために、次の(1)から(5)のステップを適 用する(適用指針[設例 1])。 (1) 顧客との契約を識別する(第 19 項から第 31 項参照)。 本会計基準の定めは、顧客と合意し、かつ、所定の要件を満たす契約に適用する。 (2) 契約における履行義務を識別する(第 32 項から第 34 項参照)。 契約において顧客への移転を約束した財又はサービスが、所定の要件を満たす場合 には別個のものであるとして、当該約束を履行義務として区分して識別する。 (3) 取引価格を算定する(第 47 項から第 64 項参照)。 変動対価又は現金以外の対価の存在を考慮し、金利相当分の影響及び顧客に支払わ - 5 - れる対価について調整を行い、取引価格を算定する。 (4) 契約における履行義務に取引価格を配分する(第 65 項から第 76 項参照)。 契約において約束した別個の財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、それ ぞれの履行義務に取引価格を配分する。独立販売価格を直接観察できない場合には、 独立販売価格を見積る。 (5) 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する(第 35 項から第 45 項参照)。 約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又 は充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識する。履行義務 は、所定の要件を満たす場合には一定の期間にわたり充足され、所定の要件を満たさ ない場合には一時点で充足される。

18. 本会計基準の定め(適用指針第 92 項から第 104 項に定める重要性等に関する代替的な 取扱いを含む。)は、顧客との個々の契約を対象として適用する。 ただし、本会計基準の定めを複数の特性の類似した契約又は履行義務から構成されるグ ループ全体を対象として適用することによる財務諸表上の影響が、当該グループの中の 個々の契約又は履行義務を対象として適用することによる影響と比較して重要性のある 差異を生じさせないことが合理的に見込まれる場合に限り、当該グループ全体を対象とし て本会計基準の定めを適用することができる。この場合、当該グループの規模及び構成要 素を反映する見積り及び仮定を用いる。

2.収益の認識基準

(1)契約の識別

19. 本会計基準を適用するにあたっては、次の(1)から(5)の要件のすべてを満たす顧客との 契約を識別する。 (1) 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を 約束していること (2) 移転される財又はサービスに関する各当事者の権利を識別できること (3) 移転される財又はサービスの支払条件を識別できること (4) 契約に経済的実質があること(すなわち、契約の結果として、企業の将来キャッシ ュ・フローのリスク、時期又は金額が変動すると見込まれること) (5) 顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収 する可能性が高いこと 当該対価を回収する可能性の評価にあたっては、対価の支払期限到来時における顧 客が支払う意思と能力を考慮する(適用指針[設例 2])。

20. 契約とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決 めをいう(第 5 項参照)。契約における権利及び義務の強制力は法的な概念に基づくもの - 6 - であり、契約は書面、口頭、取引慣行等により成立する。顧客との契約締結に関する慣行 及び手続は、国、業種又は企業により異なり、同一企業内でも異なる場合がある(例えば、 顧客の属性や、約束した財又はサービスの性質により異なる場合がある。)。そのため、そ れらを考慮して、顧客との合意が強制力のある権利及び義務を生じさせるのかどうか並び にいつ生じさせるのかを判断する。

21. 本会計基準は、契約の当事者が現在の強制力のある権利及び義務を有している契約の存 続期間を対象として適用される。

22. 契約の当事者のそれぞれが、他の当事者に補償することなく完全に未履行の契約を解約 する一方的で強制力のある権利を有している場合には、当該契約に本会計基準を適用しな い。 完全に未履行の契約とは、次の(1)及び(2)のいずれも満たす契約である。 (1) 企業が約束した財又はサービスを顧客に未だ移転していない。 (2) 企業が、約束した財又はサービスと交換に、対価を未だ受け取っておらず、対価を 受け取る権利も未だ得ていない。

23. 顧客との契約が契約における取引開始日において第 19 項の要件を満たす場合には、事 実及び状況の重要な変化の兆候がない限り、当該要件を満たすかどうかについて見直しを 行わない。

24. 顧客との契約が第 19 項の要件を満たさない場合には、当該要件を事後的に満たすかど うかを引き続き評価し、顧客との契約が当該要件を満たしたときに本会計基準を適用する。

25. 顧客との契約が第 19 項の要件を満たさない場合において、顧客から対価を受け取った 際には、次の(1)又は(2)のいずれかに該当するときに、受け取った対価を収益として認識 する。 (1) 財又はサービスを顧客に移転する残りの義務がなく、約束した対価のほとんどすべ てを受け取っており、顧客への返金は不要であること (2) 契約が解約されており、顧客から受け取った対価の返金は不要であること

26. 顧客から受け取った対価については、前項(1)又は(2)のいずれかに該当するまで、ある いは、第 19 項の要件が事後的に満たされるまで(第 24 項参照)、将来における財又はサ ービスを移転する義務又は対価を返金する義務として、負債を認識する。

(2)契約の結合

27. 同一の顧客(当該顧客の関連当事者を含む。)と同時又はほぼ同時に締結した複数の契約 について、次の(1)から(3)のいずれかに該当する場合には、当該複数の契約を結合し、単 一の契約とみなして処理する。 (1) 当該複数の契約が同一の商業的目的を有するものとして交渉されたこと (2) 1 つの契約において支払われる対価の額が、他の契約の価格又は履行により影響を 受けること - 7 - (3) 当該複数の契約において約束した財又はサービスが、第 32 項から第 34 項に従うと 単一の履行義務となること

(3)契約変更

28. 契約変更は、契約の当事者が承認した契約の範囲又は価格(あるいはその両方)の変更 であり、契約の当事者が、契約の当事者の強制力のある権利及び義務を新たに生じさせる 変更又は既存の強制力のある権利及び義務を変化させる変更を承認した場合に生じるも のである。 契約の当事者が契約変更を承認していない場合には、契約変更が承認されるまで、本会 計基準を既存の契約に引き続き適用する。

29. 契約の当事者が契約の範囲の変更を承認したが、変更された契約の範囲に対応する価格 の変更を決定していない場合には、第 50 項から第 52 項及び第 54 項に従って、当該契約 変更による取引価格の変更を見積る。

30. 契約変更について、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、当該契約変更を 独立した契約として処理する。 (1) 別個の財又はサービス(第 34 項参照)の追加により、契約の範囲が拡大されること (2) 変更される契約の価格が、追加的に約束した財又はサービスに対する独立販売価格 に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること

31. 契約変更が前項の要件を満たさず、独立した契約として処理されない場合には、契約変 更日において未だ移転していない財又はサービスについて、それぞれ次の(1)から(3)のい ずれかの方法により処理する。 (1) 未だ移転していない財又はサービスが契約変更日以前に移転した財又はサービス と別個のものである場合には、契約変更を既存の契約を解約して新しい契約を締結し たものと仮定して処理する。残存履行義務に配分すべき対価の額は、次の①及び②の 合計額とする(適用指針[設例 3])。 ① 顧客が約束した対価(顧客から既に受け取った額を含む。)のうち、取引価格の 見積りに含まれているが収益として認識されていない額 ② 契約変更の一部として約束された対価 (2) 未だ移転していない財又はサービスが契約変更日以前に移転した財又はサービス と別個のものではなく、契約変更日において部分的に充足されている単一の履行義務 の一部を構成する場合には、契約変更を既存の契約の一部であると仮定して処理する。 これにより、完全な履行義務の充足に向けて財又はサービスに対する支配(第 37 項 参照)を顧客に移転する際の企業の履行を描写する進捗度(以下「履行義務の充足に 係る進捗度」という。)及び取引価格が変更される場合は、契約変更日において収益の 額を累積的な影響に基づき修正する(適用指針[設例 4])。 (3) 未だ移転していない財又はサービスが(1)と(2)の両方を含む場合には、契約変更が - 8 - 変更後の契約における未充足の履行義務に与える影響を、それぞれ(1)又は(2)の方法 に基づき処理する。

(4)履行義務の識別

32. 契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、 次の(1)又は(2)のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識 別する(第 7 項参照)。 (1) 別個の財又はサービス(第 34 項参照)(あるいは別個の財又はサービスの束) (2) 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパター ンが同じである複数の財又はサービス)(第 33 項参照)

33. 前項(2)における一連の別個の財又はサービスは、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満 たす場合には、顧客への移転のパターンが同じであるものとする。 (1) 一連の別個の財又はサービスのそれぞれが、第 38 項における一定の期間にわたり 充足される履行義務の要件を満たすこと (2) 第 41 項及び第 42 項に従って、履行義務の充足に係る進捗度の見積りに、同一の方 法が使用されること (別個の財又はサービス)

34. 顧客に約束した財又はサービスは、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、 別個のものとする(適用指針[設例 5]、[設例 6]、[設例 16]、[設例 24]及び[設例 25])。 (1) 当該財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができること、あるいは、 当該財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益 を享受することができること(すなわち、当該財又はサービスが別個のものとなる可 能性があること) (2) 当該財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約に含まれる他の約束と区分して 識別できること(すなわち、当該財又はサービスを顧客に移転する約束が契約の観点 において別個のものとなること)

(5)履行義務の充足による収益の認識

35. 企業は約束した財又はサービス(本会計基準において、顧客との契約の対象となる財又 はサービスについて、以下「資産」と記載することもある。)を顧客に移転することにより 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識する。資産が移転するのは、 顧客が当該資産に対する支配を獲得した時又は獲得するにつれてである。

36. 契約における取引開始日に、第 38 項及び第 39 項に従って、識別された履行義務のそれ ぞれが、一定の期間にわたり充足されるものか又は一時点で充足されるものかを判定する。

37. 資産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとん - 9 - どすべてを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受すること を妨げる能力を含む。)をいう。

(一定の期間にわたり充足される履行義務)

38. 次の(1)から(3)の要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配を顧客に一定の期間 にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する(適 用指針[設例 7])。 (1) 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること (2) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の 価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当 該資産を支配すること(適用指針[設例 4]) (3) 次の要件のいずれも満たすこと(適用指針[設例 8]) ① 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用する ことができない資産が生じること ② 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受 する強制力のある権利を有していること

(一時点で充足される履行義務)

39. 前項(1)から(3)の要件のいずれも満たさず、履行義務が一定の期間にわたり充足される ものではない場合には、一時点で充足される履行義務として、資産に対する支配を顧客に 移転することにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識する。

40. 資産に対する支配を顧客に移転した時点を決定するにあたっては、第 37 項の定めを考 慮する。また、支配の移転を検討する際には、例えば、次の(1)から(5)の指標を考慮する。 (1) 企業が顧客に提供した資産に関する対価を収受する現在の権利を有していること (2) 顧客が資産に対する法的所有権を有していること (3) 企業が資産の物理的占有を移転したこと (4) 顧客が資産の所有に伴う重大なリスクを負い、経済価値を享受していること (5) 顧客が資産を検収したこと

(履行義務の充足に係る進捗度)

41. 一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見 積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識する。

42. 一定の期間にわたり充足される履行義務については、単一の方法で履行義務の充足に係 る進捗度を見積り、類似の履行義務及び状況に首尾一貫した方法を適用する。

43. 履行義務の充足に係る進捗度は、各決算日に見直し、当該進捗度の見積りを変更する場 合は、会計上の見積りの変更(企業会計基準第 24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関す - 10 - る会計基準」第 4 項(7))として処理する。

44. 履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合にのみ、一定の期間に わたり充足される履行義務について収益を認識する。

45. 履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないが、当該履行義務を充足 する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合には、履行義務の充足に係る進捗 度を合理的に見積ることができる時まで、一定の期間にわたり充足される履行義務につい て原価回収基準により処理する。

3.収益の額の算定

(1)取引価格に基づく収益の額の算定

46. 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、取引価格(第 54 項の定めを考慮する。) のうち、当該履行義務に配分した額について収益を認識する。

(2)取引価格の算定

47. 取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価 の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)をいう(第 8 項参照)(適用指針[設例 27]及び[設例 29])。取引価格の算定にあたっては、契約条件や取引慣行等を考慮する。

48. 顧客により約束された対価の性質、時期及び金額は、取引価格の見積りに影響を与える。 取引価格を算定する際には、次の(1)から(4)のすべての影響を考慮する。 (1) 変動対価(第 50 項から第 55 項参照) (2) 契約における重要な金融要素(第 56 項から第 58 項参照) (3) 現金以外の対価(第 59 項から第 62 項参照) (4) 顧客に支払われる対価(第 63 項及び第 64 項参照)

49. 取引価格を算定する際には、財又はサービスが契約に従って顧客に移転され、契約の取 消、更新又は変更はないものと仮定する。

(変動対価)

50. 顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分を「変動対価」という。契約にお いて、顧客と約束した対価に変動対価が含まれる場合、財又はサービスの顧客への移転と 交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積る。

51. 変動対価の額の見積りにあたっては、発生し得ると考えられる対価の額における最も可 能性の高い単一の金額(最頻値)による方法又は発生し得ると考えられる対価の額を確率 で加重平均した金額(期待値)による方法のいずれかのうち、企業が権利を得ることとな る対価の額をより適切に予測できる方法を用いる(適用指針[設例 10]、[設例 11]及び[設 例 12])。

52. 変動対価の額に関する不確実性の影響を見積るにあたっては、契約全体を通じて単一の - 11 - 方法を首尾一貫して適用する。また、企業が合理的に入手できるすべての情報を考慮し、 発生し得ると考えられる対価の額について合理的な数のシナリオを識別する。

53. 顧客から受け取った又は受け取る対価の一部あるいは全部を顧客に返金すると見込む 場合、受け取った又は受け取る対価の額のうち、企業が権利を得ると見込まない額につい て、返金負債を認識する。返金負債の額は、各決算日に見直す(適用指針[設例 11])。

54. 第 51 項に従って見積られた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性 が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生し ない可能性が高い部分に限り、取引価格に含める(適用指針[設例 3]、[設例 4]、[設例 11]、 [設例 12]及び[設例 13])。

55. 見積った取引価格は、各決算日に見直し、取引価格が変動する場合には、第 74 項から第 76 項の定めを適用する(適用指針[設例 3]、[設例 4]及び[設例 12-2])。

(契約における重要な金融要素)

56. 契約の当事者が明示的又は黙示的に合意した支払時期により、財又はサービスの顧客へ の移転に係る信用供与についての重要な便益が顧客又は企業に提供される場合には、顧客 との契約は重要な金融要素を含むものとする。

57. 顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合、取引価格の算定にあたっては、約束し た対価の額に含まれる金利相当分の影響を調整する。収益は、約束した財又はサービスが 顧客に移転した時点で(又は移転するにつれて)、当該財又はサービスに対して顧客が支払 うと見込まれる現金販売価格を反映する金額で認識する。

58. 契約における取引開始日において、約束した財又はサービスを顧客に移転する時点と顧 客が支払を行う時点の間が 1 年以内であると見込まれる場合には、重要な金融要素の影響 について約束した対価の額を調整しないことができる。

(現金以外の対価)

59. 契約における対価が現金以外の場合に取引価格を算定するにあたっては、当該対価を時 価により算定する。

60. 現金以外の対価の時価を合理的に見積ることができない場合には、当該対価と交換に顧 客に約束した財又はサービスの独立販売価格を基礎として当該対価を算定する。

61. 現金以外の対価の時価が変動する理由が、株価の変動等、対価の種類によるものだけで はない場合(例えば、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて時価が変動す る場合)には、第 54 項の定めを適用する。

62. 企業による契約の履行に資するために、顧客が財又はサービス(例えば、材料、設備又 は労働)を企業に提供する場合には、企業は、顧客から提供された財又はサービスに対す る支配を獲得するかどうかを判定する。顧客から提供された財又はサービスに対する支配 を獲得する場合には、当該財又はサービスを、顧客から受け取る現金以外の対価として処理する。

(顧客に支払われる対価)

63. 顧客に支払われる対価は、企業が顧客(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入 する他の当事者)に対して支払う又は支払うと見込まれる現金の額や、顧客が企業(ある いは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対する債務額に充当できる もの(例えば、クーポン)の額を含む。 顧客に支払われる対価は、顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われる ものである場合を除き、取引価格から減額する。顧客に支払われる対価に変動対価が含ま れる場合には、取引価格の見積りを第 50 項から第 54 項に従って行う(適用指針[設例 14])。

64. 顧客に支払われる対価を取引価格から減額する場合には、次の(1)又は(2)のいずれか遅 い方が発生した時点で(又は発生するにつれて)、収益を減額する(適用指針[設例 14])。 (1) 関連する財又はサービスの移転に対する収益を認識する時 (2) 企業が対価を支払うか又は支払を約束する時(当該支払が将来の事象を条件とする 場合も含む。また、支払の約束は、取引慣行に基づくものも含む。)

(3)履行義務への取引価格の配分

65. それぞれの履行義務(あるいは別個の財又はサービス)に対する取引価格の配分は、財 又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を描写するよ うに行う。

66. 財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、契約において識別したそれぞれの履行 義務に取引価格を配分する。ただし、第 70 項から第 73 項の定めを適用する場合を除く(適 用指針[設例 15-1])。

67. 契約に単一の履行義務しかない場合には、第 68 項から第 73 項の定めを適用しない。た だし、第 32 項(2)に従って一連の別個の財又はサービスを移転する約束が単一の履行義務 として識別され、かつ、約束された対価に変動対価が含まれる場合には、第 72 項及び第 73 項の定めを適用する。

(独立販売価格に基づく配分)

68. 第 66 項に従って財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき取引価格を配分する際 には、契約におけるそれぞれの履行義務の基礎となる別個の財又はサービスについて、契 約における取引開始日の独立販売価格を算定し、取引価格を当該独立販売価格の比率に基 づき配分する。

69. 財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合には、市場の状況、企業固有の 要因、顧客に関する情報等、合理的に入手できるすべての情報を考慮し、観察可能な入力 数値を最大限利用して、独立販売価格を見積る。類似の状況においては、見積方法を首尾一貫して適用する。

(値引きの配分)

70. 契約における約束した財又はサービスの独立販売価格の合計額が当該契約の取引価格 を超える場合には、契約における財又はサービスの束について顧客に値引きを行っている ものとして、当該値引きについて、契約におけるすべての履行義務に対して比例的に配分 する。

71. 前項の定めにかかわらず、次の(1)から(3)の要件のすべてを満たす場合には、契約にお ける履行義務のうち 1 つ又は複数(ただし、すべてではない。)に値引きを配分する(適用 指針[設例 15])。 (1) 契約における別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束)のそれ ぞれを、通常、単独で販売していること (2) 当該別個の財又はサービスのうちの一部を束にしたものについても、通常、それぞ れの束に含まれる財又はサービスの独立販売価格から値引きして販売していること (3) (2)における財又はサービスの束のそれぞれに対する値引きが、当該契約の値引き とほぼ同額であり、それぞれの束に含まれる財又はサービスを評価することにより、 当該契約の値引き全体がどの履行義務に対するものかについて観察可能な証拠があ ること

(変動対価の配分)

72. 次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、変動対価及びその事後的な変動のす べてを、1 つの履行義務あるいは第 32 項(2)に従って識別された単一の履行義務に含まれ る 1 つの別個の財又はサービスに配分する(適用指針[設例 25])。 (1) 変動性のある支払の条件が、当該履行義務を充足するための活動や当該別個の財又 はサービスを移転するための活動(あるいは当該履行義務の充足による特定の結果又 は当該別個の財又はサービスの移転による特定の結果)に個別に関連していること (2) 契約における履行義務及び支払条件のすべてを考慮した場合、変動対価の額のすべ てを当該履行義務あるいは当該別個の財又はサービスに配分することが、企業が権利 を得ると見込む対価の額を描写すること

73. 前項の要件を満たさない残りの取引価格については、第 65 項から第 71 項の定めに従っ て配分する。

(4)取引価格の変動

74. 取引価格の事後的な変動については、契約における取引開始日後の独立販売価格の変動 を考慮せず、契約における取引開始日と同じ基礎により契約における履行義務に配分する。 取引価格の事後的な変動のうち、既に充足した履行義務に配分された額については、取引価格が変動した期の収益の額を修正する(適用指針[設例 13])。

75. 第 72 項の要件のいずれも満たす場合には、取引価格の変動のすべてについて、次の(1) 又は(2)のいずれかに配分する。 (1) 1 つ又は複数の(ただし、すべてではない。)履行義務 (2) 第 32 項(2)に従って識別された単一の履行義務に含まれる 1 つ又は複数の(ただし、 すべてではない。)別個の財又はサービス

76. 契約変更によって生じる取引価格の変動は、第 28 項から第 31 項に従って処理する。契 約変更が第 30 項の要件を満たさず、独立した契約として処理されない場合(第 31 項参 照)、当該契約変更を行った後に生じる取引価格の変動について、第 74 項及び第 75 項の 定めに従って、次の(1)又は(2)のいずれかの方法で配分する。 (1) 取引価格の変動が契約変更の前に約束された変動対価の額に起因し、当該契約変更 を第 31 項(1)に従って処理する場合には、取引価格の変動を契約変更の前に識別した 履行義務に配分する(適用指針[設例 3])。 (2) 当該契約変更を第 31 項(1)に従って処理しない場合には、取引価格の変動を契約変 更の直後に充足されていない又は部分的に充足されていない履行義務に配分する。

4.契約資産、契約負債及び債権

77. 顧客から対価を受け取る前又は対価を受け取る期限が到来する前に、財又はサービスを 顧客に移転した場合は、収益を認識し、契約資産又は債権を貸借対照表に計上する。 契約資産は、金銭債権として取り扱うこととし、金融商品会計基準に従って処理する。

78. 財又はサービスを顧客に移転する前に顧客から対価を受け取る場合、顧客から対価を受 け取った時又は対価を受け取る期限が到来した時のいずれか早い時点で、顧客から受け取 る対価について契約負債を貸借対照表に計上する。

Ⅳ.開 示

1.表 示

79. 企業が履行している場合又は企業が履行する前に顧客から対価を受け取る場合には、企 業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債又は債権を適切な科目をも って貸借対照表に表示する。 契約資産と債権を貸借対照表に区分して表示しない場合は、それぞれの残高を注記する。

2.注記事項

80. 顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内 容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記す る。なお、当該注記は、重要な会計方針の注記には含めず、個別の注記として開示する。

Ⅴ.適用時期等

1.適用時期

81. 本会計基準は、平成 33 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から 適用する。

82. ただし、平成 30 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計 基準を適用することができる。

83. 前項の定めに加え、平成 30 年 12 月 31 日に終了する連結会計年度及び事業年度から平 成 31 年 3 月 30 日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財 務諸表及び個別財務諸表から本会計基準を適用することができる。この適用にあたって、 早期適用した連結会計年度及び事業年度の翌年度に係る四半期(又は中間)連結財務諸表 及び四半期(又は中間)個別財務諸表においては、早期適用した連結会計年度及び事業年 度の四半期(又は中間)連結財務諸表及び四半期(又は中間)個別財務諸表について、本 会計基準を当該年度の期首に遡って適用する。

2.経過措置

84. 本会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取 り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する(以下「原則 的な取扱い」という。)。 ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の 累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計 方針を適用することができる。

85. 本会計基準を原則的な取扱いに従って遡及適用する場合、次の(1)から(4)の方法の 1 つ 又は複数を適用することができる。 (1) 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに従前の取扱いに 従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約について、適用初年度の前連結会計 年度の連結財務諸表及び四半期(又は中間)連結財務諸表並びに適用初年度の前事業 年度の個別財務諸表及び四半期(又は中間)個別財務諸表(以下合わせて「適用初年 度の比較情報」という。)を遡及的に修正しないこと (2) 適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額 を認識した契約に変動対価が含まれる場合、当該契約に含まれる変動対価の額につい て、変動対価の額に関する不確実性が解消された時の金額を用いて適用初年度の比較 情報を遡及的に修正すること (3) 適用初年度の前連結会計年度内及び前事業年度内に開始して終了した契約につい て、適用初年度の前連結会計年度の四半期(又は中間)連結財務諸表及び適用初年度 の前事業年度の四半期(又は中間)個別財務諸表を遡及的に修正しないこと (4) 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、次の①から③の処 理を行い、適用初年度の比較情報を遡及的に修正すること ① 履行義務の充足分及び未充足分の区分 ② 取引価格の算定 ③ 履行義務の充足分及び未充足分への取引価格の配分

86. 第 84 項ただし書きの方法を選択する場合、適用初年度の期首より前までに従前の取扱 いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に、新たな会計方針を遡及適用しな いことができる。 また、第 84 項ただし書きの方法を選択する場合、契約変更について、次の(1)又は(2)の いずれかを適用し、その累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減することが できる。 (1) 適用初年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反 映した後の契約条件に基づき、前項(4)の①から③の処理を行うこと (2) 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに行われた契約変 更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、前項(4)の①から③ の処理を行うこと

87. 第 84 項から第 86 項の定めにかかわらず、国際財務報告基準(IFRS)又は米国会計基準 を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に 本会計基準を適用する場合には、本会計基準の適用初年度において、IFRS 第 15 号「顧客 との契約から生じる収益」(以下「IFRS 第 15 号」という。)又は FASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)の Topic 606「顧客との契約から生じる収益」(以下「Topic 606」という。)のいずれかの経過措置 の定めを適用することができる。 また、第 84 項から第 86 項の定めにかかわらず、IFRS を連結財務諸表に初めて適用する 企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に本会計基準を適用する場合には、 本会計基準の適用初年度において、IFRS 第 1 号「国際財務報告基準の初度適用」(以下「IFRS 第 1 号」という。)における経過措置に関する定めを適用することができる。

88. 本会計基準を第 82 項又は第 83 項に基づき適用する場合は、第 79 項の定めにかかわら ず、契約資産と債権を貸借対照表において区分表示せず、かつ、それぞれの残高を注記し ないことができる。

89. 第 47 項の定めに従って、本会計基準の適用初年度において、消費税及び地方消費税(以 下「消費税等」という。)の会計処理を税込方式から税抜方式に変更する場合には、会計基 準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。この場合、適用初年度の期首より前ま でに税込方式に従って消費税等が算入された固定資産等の取得原価から消費税等相当額 を控除しないことができる。

3.その他

90. 第 81 項の適用により、次の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告は 廃止する。 (1) 企業会計基準第 15 号「工事契約に関する会計基準」(以下「工事契約会計基準」と いう。) (2) 企業会計基準適用指針第 18 号「工事契約に関する会計基準の適用指針」(以下「工 事契約適用指針」という。) (3) 実務対応報告第 17 号「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱 い」(以下「ソフトウェア取引実務対応報告」という。)

Ⅵ.議 決

91. 本会計基準は、第 381 回企業会計基準委員会に出席した委員 13 名全員の賛成により承 認された。なお、出席した委員は以下のとおりである。 小 野 行 雄(委員長) 小賀坂 敦(副委員長) 川 西 安 喜 安 井 良 太 貝 増 眞 徳 賀 芳 弘 西 山 賢 吾 弥 永 真 生 柳 橋 勝 人 湯 川 喜 雄 吉 田 稔 米 田 和 敬 渡 部 仁

結論の背景

経 緯

92. 我が国においては、企業会計原則に、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売 又は役務の給付によって実現したものに限る。」(企業会計原則 第二 損益計算書原則 三 B)とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていなか った。 一方、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して 収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、平成 26 年(2014 年)5 月に「顧客との 契約から生じる収益」(IASB においては IFRS 第 15 号、FASB においては Topic 606)を公 表している。両基準は、文言レベルで概ね同一の基準となっており、当該基準の適用後、 IFRS と米国会計基準により作成される財務諸表における収益の額は当該基準により報告 されることとなる。 売上高、営業収入等、その呼称は業種や取引の種類により異なるが、収益は、企業の主 な営業活動からの成果を表示するものとして、企業の経営成績を表示するうえで重要な財 務情報と考えられる。 これらの状況を踏まえ、当委員会は、平成 27 年 3 月に開催された第 308 回企業会計基 準委員会において、IFRS 第 15 号を踏まえた我が国における収益認識に関する包括的な会 計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し検討を開始した。

93. 当委員会では、検討の初期の段階で適用上の課題や今後の検討の進め方に対する意見を 幅広く把握するため、平成 28 年 2 月に「収益認識に関する包括的な会計基準の開発につ いての意見の募集」(以下「意見募集文書」という。)を公表した(平成 28 年 4 月に一部改 訂している。)。 意見募集文書では、次の事項を、収益認識に関する包括的な会計基準の開発の意義とし て掲げている。 (1) 我が国の会計基準の体系の整備 (2) 企業間の財務諸表の比較可能性の向上 (3) 企業により開示される情報の充実 意見募集文書に対して 33 通のコメント・レターが寄せられ、コメント・レターの大半は IFRS第 15号の内容を出発点とした当該基準の開発を全般的には支持するものであったが、 適用上の課題も多く寄せられた。 当委員会では、これらの意見募集文書に寄せられた意見を踏まえ、課題の抽出を行い、 それらを検討したうえで、平成 29 年 7 月に企業会計基準公開草案第 61 号「収益認識に関 する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第 61 号「収益認識に関する会計 基準の適用指針(案)」を公表して広く意見を求めた。本会計基準は、公開草案に対して寄 せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正したうえで公表するに至 - 19 - ったものである。

94. なお、当委員会は、平成 28 年 8 月に中期運営方針を公表している。当該中期運営方針 においては、我が国の上場企業等で用いられる会計基準の質の向上を図るために、日本基 準を高品質で国際的に整合性のとれたものとして維持・向上を図ることを方針として掲げ ており、本会計基準の内容は、当該中期運営方針に沿ったものである。

95. また、本会計基準の適用により、次の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対 応報告は廃止される。 (1) 工事契約会計基準 (2) 工事契約適用指針 (3) ソフトウェア取引実務対応報告

96. 本会計基準の実務への適用を検討する過程で、本会計基準における定めが明確であるも のの、これに従った処理を行うことが実務上著しく困難な状況が市場関係者により識別さ れ、その旨当委員会に提起された場合には、公開の審議により、別途の対応を図ることの 要否を当委員会において判断することとした。

開発にあたっての基本的な方針

97. 当委員会では、収益認識に関する会計基準の開発にあたっての基本的な方針として、 IFRS 第 15 号と整合性を図る便益の 1 つである国内外の企業間における財務諸表の比較可 能性の観点から、IFRS 第 15 号の基本的な原則を取り入れることを出発点とし、会計基準 を定めることとした。また、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮すべき項目があ る場合には、比較可能性を損なわせない範囲で代替的な取扱いを追加することとした。

98. 前項の方針の下、連結財務諸表に関して、次の開発の方針を定めた。 (1) IFRS 第 15 号の定めを基本的にすべて取り入れる。 (2) 適用上の課題に対応するために、代替的な取扱いを追加的に定める。代替的な取扱 いを追加的に定める場合、国際的な比較可能性を大きく損なわせないものとすること を基本とする。 (1)の方針を定めた理由は、次のとおりである。 ① 収益認識に関する包括的な会計基準の開発の意義の 1 つとして、国際的な比較 可能性の確保が重要なものと考えられること ② IFRS 第 15 号は、5 つのステップに基づき、履行義務の識別、取引価格の配分、 支配の移転による収益認識等を定めており、部分的に採用することが困難である と考えられること

99. 連結財務諸表に関する方針を前項のとおり定めたうえで個別財務諸表の取扱いについ て審議がなされた。審議の過程では、次のとおり、さまざまな意見が聞かれた。 (1) 経営管理の観点からは、連結財務諸表と個別財務諸表の取扱いは同一の内容とする ことが好ましい。 (2) IFRS 又は米国会計基準により連結財務諸表を作成している企業にとっては、個別財 務諸表も、IFRS 第 15 号又は Topic 606 を基礎とした内容とすることが好ましい。 (3) 個別財務諸表については、中小規模の上場企業や連結子会社を含むさまざまな企業 に影響を及ぼすため、可能な限り簡素な定めとして、本会計基準の導入時及び適用時 のコストを軽減すべきである。 (4) 個別財務諸表における金額は、関連諸法規等に用いられ、特に法人税法上の課税所 得計算の基礎となるため、法人税との関係に配慮すべきである。 この点、次を理由に、基本的には、連結財務諸表と個別財務諸表において同一の会計処 理を定めることとした。 ① 当委員会において、これまでに開発してきた会計基準では、基本的に連結財務 諸表と個別財務諸表において同一の会計処理を定めてきたこと ② 連結財務諸表と個別財務諸表で同一の内容としない場合、企業が連結財務諸表 を作成する際の連結調整に係るコストが生じる。一方、連結財務諸表と個別財務 諸表で同一の内容とする場合、中小規模の上場企業や連結子会社等における負担 が懸念されるが、重要性等に関する代替的な取扱いの定めを置くこと等により一 定程度実務における対応が可能となること

100. 本会計基準は、上記の基本的な方針の下で開発しており、次の構成としている。 (1) 基本的に IFRS 第 15 号の会計基準の内容を基礎とした定め ① 本会計基準のうち第 16 項から第 79 項 ② 適用指針のうち第 4 項から第 89 項及び第 105 項 (2) 追加的に定めた代替的な取扱い 適用指針のうち第 92 項から第 104 項

101. なお、他の会計基準と同様に、重要性が乏しい取引には、本会計基準を適用しないこと ができる。

Ⅰ.範 囲

102. 本会計基準で取り扱う範囲は、IFRS 第 15 号と同様に、顧客との契約から生じる収益と し、顧客との契約から生じるものではない取引又は事象から生じる収益は、本会計基準で 取り扱わないこととした。 契約の相手方が、対価と交換に企業の通常の営業活動により生じたアウトプットである 財又はサービスを得るために当該企業と契約した当事者である顧客(第 6 項参照)である 場合にのみ、本会計基準が適用される。

103. 顧客との契約から生じる収益のうち、金融商品会計基準の範囲に含まれる利息、金融商 品の消滅の認識時に発生する利益等の金融商品に係る取引は、IFRS 第 15 号と同様に、本 会計基準の適用範囲に含めないこととした(第 3 項(1)参照)。

104. 顧客との契約から生じる収益のうち、リース会計基準の範囲に含まれるリース取引(貸 - 21 - 手の会計処理)は、IFRS 第 15 号と同様に、本会計基準の適用範囲に含めないこととした (第 3 項(2)参照)。なお、ライセンスの供与については、本会計基準の適用範囲に含まれ るが、リース会計基準に従って処理される契約の取扱いを変えることを意図するものでは ない。 また、本会計基準で割賦基準による収益認識が認められていないことは、仮にリース取 引における貸手の会計処理の検討が行われる際には、ファイナンス・リース取引に係る貸 手の会計処理のうち、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法に関する定め (企業会計基準適用指針第 16 号「リース取引に関する会計基準の適用指針」第 51 項(2) 及び第 61 項)及び貸手の製作価額又は現金購入価額と借手に対する現金販売価額に差が ある場合に、当該差額である販売益を販売基準又は割賦基準により処理する定め(同第 56 項及び第 66 項)等に影響し得る。リース取引に関する会計基準については、今後、国際的 な会計基準(IFRS 第 16 号「リース」)との整合性の観点から、会計基準の改訂に向けた検 討に着手するか否かの検討を行う予定であり、当該貸手の会計処理については、当該検討 に含めて行う予定である。

105. 保険契約については、現行の我が国における会計基準においてその会計処理を定めたも のはないが、IFRS 第 15 号と同様に、本会計基準の適用範囲に含めないこととした(第 3 項(3)参照)。

106. 顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又は製 品の交換取引については、商品又は製品を交換する同業他社は、企業の通常の営業活動に より生じたアウトプットを獲得するために企業と契約しているため、顧客の定義に該当す るが、IFRS 第 15 号と同様に、本会計基準の適用範囲に含めないこととした(第 3 項(4)参 照)。IFRS 第 15 号においては、同業他社との棚卸資産の交換について収益を認識し、その 後で再び最終顧客に対する棚卸資産の販売について収益を認識すると、収益及び費用を二 重に計上することになり、財務諸表利用者が企業による履行及び粗利益を評価することが 困難となるため適切ではないとされている。我が国においては、棚卸資産の交換取引に関 する会計処理の定めが明示されていないが、IFRS 第 15 号と同様に、同業他社との棚卸資 産の交換について収益を認識することは適切ではないと考えられる。

107. 金融商品に関する会計基準については、今後、国際的な会計基準(IFRS 第 9 号「金融商 品」)との整合性の観点から、会計基準の改訂に向けた検討に着手するか否かの検討を行う 予定である。顧客との契約から生じる収益に該当する金融商品の組成又は取得に際して受 け取る手数料については、金融商品に関する会計基準を改訂する場合には、その会計処理 が変わる可能性があるため、本会計基準の適用範囲から除外している(第 3 項(5)参照)。

108. IFRS においては、企業の通常の営業活動により生じたアウトプットではない固定資産の 売却について、IFRS 第 15 号と同様の収益の認識を行うよう IAS 第 16 号「有形固定資産」 が改正されたが、本会計基準においては、企業の通常の営業活動により生じたアウトプッ トではない固定資産の売却については、論点が異なり得るため改正の範囲に含めておらず、本会計基準の適用範囲に含まれない。また、企業の通常の営業活動により生じたアウトプ ットとなる不動産の売却は、本会計基準の適用範囲に含まれるが、当該不動産の売却のう ち、不動産流動化実務指針の対象となる不動産(不動産信託受益権を含む。)の譲渡に係る 会計処理は、連結の範囲等の検討と関連するため、本会計基準の適用範囲から除外してい る(第 3 項(6)参照)。

109. 本会計基準では、棚卸資産や固定資産等、コストの資産化等の定めが IFRS の体系とは 異なるため、IFRS 第 15 号における契約コスト(契約獲得の増分コスト及び契約を履行す るためのコスト)の定めを範囲に含めていない。 ただし、IFRS 又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業が当該企業の個別財 務諸表に本会計基準を適用する場合には、契約コストの会計処理を連結財務諸表と個別財 務諸表で異なるものとすることは実務上の負担を生じさせると考えられるため、個別財務 諸表において IFRS 第 15 号又は Topic 606 における契約コストの定めに従った処理をする ことは妨げられないものとした。 また、IFRS 又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業の連結子会社が当該連 結子会社の連結財務諸表及び個別財務諸表に本会計基準を適用する場合にも、契約コスト の会計処理を親会社の連結財務諸表における会計処理と異なるものとすることは実務上 の負担を生じさせると考えられるため、連結財務諸表及び個別財務諸表において IFRS 第 15 号又は Topic 606 における契約コストの定めに従った処理をすることは妨げられない ものとした。

Ⅱ.用語の定義

110. 本会計基準では、IFRS 第 15 号における用語の定義のうち、必要と考えられるものにつ いて、本会計基準の用語の定義に含めている(第 5 項から第 12 項参照)。

111. 本会計基準は、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用される (顧客の定義は第 6 項参照)。例えば、企業の通常の営業活動により生じたアウトプット である財又はサービスを獲得するためではなく、リスクと便益を契約当事者で共有する活 動又はプロセス(提携契約に基づく共同研究開発等)に参加するために企業と契約を締結 する当該契約の相手方は、顧客ではなく、当該契約に本会計基準は適用されない。

112. 工事契約については、工事契約会計基準における定義を踏襲している(第 13 項参照)。 なお、請負契約ではあっても専らサービスの提供を目的とする契約や、外形上は工事契約 に類似する契約であっても、工事に係る労働サービスの提供そのものを目的とするような 契約は、工事契約会計基準と同様に、工事契約に含まれない。

b113. 受注制作のソフトウェアの範囲については、工事契約会計基準と同様に、「研究開発費等 に係る会計基準」(平成 10 年 3 月 企業会計審議会)及びソフトウェア取引実務対応報告 を踏襲している(第 14 項参照)。

Ⅲ.会計処理等

(IFRS 第 15 号の定め及び結論の根拠を基礎としたもの)

114. 第 100 項に記載したとおり、本会計基準の本文のうち第 16 項から第 79 項は、基本的に IFRS 第 15 号における会計基準の内容を基礎としており、結論の背景についても、第 115 項から第 150 項は、IFRS 第 15 号における会計基準及び結論の根拠を基礎としている。

1.基本となる原則

115. 本会計基準では、IFRS 第 15 号と同様に、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・ フローの性質、金額、時期及び不確実性に関する有用な情報を財務諸表利用者に報告する ために、基本となる原則を示している(第 16 項参照)。また、本会計基準では、市場関係 者の理解に資するために、基本となる原則に従って収益を認識するための 5 つのステップ を示している(第 17 項参照)。

116. 本会計基準の定め(適用指針第 92 項から第 104 項に定める重要性等に関する代替的な 取扱いを含む。)は、顧客との個々の契約を対象として適用する。ただし、企業が多数の類 似した契約又は履行義務を有していることもあり、実務的な方法として、本会計基準を特 性の類似した契約又は履行義務から構成されるグループ全体に適用する(例えば、当該グ ループを収益認識の単位又は収益の額の算定単位として用いる。)ことによる財務諸表上 の影響が、当該グループの中の個々の契約又は履行義務を対象として本会計基準の定めを 適用することによる影響と比較して重要性のある差異を生じさせないことが合理的に見 込まれる場合に限り、個々の契約又は履行義務を対象とせず、当該グループ全体を対象と して本会計基準の定めを適用することを認めている(第 18 項参照)。 例えば、特性の類似した複数の契約に含まれる財及びサービスのそれぞれが履行義務と して識別され、当該履行義務に取引価格を配分する際には、原則として、個々の契約につ いて、財及びサービスのそれぞれの独立販売価格の比率に基づくこととなる。ただし、個々 の契約に基づき配分された取引価格との差異が財務諸表上の重要性のある影響を生じさ せないことが合理的に見込まれる場合には、類似した複数の契約を 1 つのグループとし、 当該グループに含まれる財及びサービスの独立販売価格の合計と取引価格の合計との比 率を用いて、当該グループに含まれる各契約の財及びサービスの独立販売価格から当該財 及びサービスに配分される取引価格を算定する方法も認められる。

2.収益の認識基準

(1)契約の識別

117. 本会計基準が適用される顧客との契約は、第 19 項に定める 5 つの要件のすべてを満た す顧客との契約である。当該要件の 1 つである顧客に移転する財又はサービスと交換に企 業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと(第 19 項(5)参照)を評価す る際に、企業が顧客に価格の引下げを提供する可能性があることにより対価に変動性があ る場合には、企業が権利を得ることとなる対価の額は契約に記載される価格よりも低くな ることを考慮する。 なお、対価を回収する「可能性が高い」ことについて、IFRS 第 15 号では“probable” という表現が用いられている。ここで、IFRS における“probable”の意味に照らすと、対 価を回収する可能性の方が回収できない可能性よりも高いこと(more likely than not) を示すこととなるが、我が国の実務では、契約の締結可否を判断するにあたって回収可能 性を検討する際に、それよりも高い閾値に基づき判断していることに鑑み、「可能性が高 い」という表現を用いている。

118. 顧客から対価を回収する可能性を評価する際には、顧客の財務上の支払能力及び顧客が 対価を支払う意思を考慮する(第 19 項(5)参照)。顧客が対価を支払う意思の評価にあた っては、対価の支払期限が到来している(すなわち、対応する履行義務が充足され、企業 が権利を有する対価が変動しない。)と仮定したうえで、顧客又は同種の顧客グループの過 去の慣行を含むすべての事実及び状況を考慮する必要がある。

119. 契約の中には、固定された存続期間がなく、契約の当事者のそれぞれがいつでも終了又 は変更できるものや、契約に定められた一定期間ごとに自動更新となるものがあるが、本 会計基準は、契約の当事者が現在の強制力のある権利及び義務を有している契約の存続期 間を対象として適用される(第 21 項参照)。

120. 顧客との契約が契約における取引開始日において第 19 項の要件を満たす場合には、事 実及び状況の重要な変化の兆候がない限り、当該要件を満たすかどうかについて見直しを 行わない(第 23 項参照)が、例えば、顧客が対価を支払う能力が著しく低下した場合に は、顧客に移転する残りの財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回 収する可能性が高いかどうかについて見直しを行う。なお、既に認識した収益、債権又は 契約資産は、当該見直しの対象とはならない。

(2)契約の結合

121. 複数の契約は、区分して処理するか単一の契約として処理するかにより収益認識の時期 及び金額が異なる可能性があるため、第 27 項の要件を満たす場合には、複数の契約を結 合して単一の契約として処理する。

(3)契約変更

122. 契約変更は、契約の当事者による承認により生じるものであり、当該承認は、書面や口 頭による合意で行われる場合もあれば、取引慣行により含意される場合もある。 契約の当事者が契約変更の範囲又は価格(あるいはその両方)について合意していない 場合や、契約の当事者が契約の範囲の変更を承認したが、変更された契約の範囲に対応す る価格の変更を決定していない場合でも、契約変更は生じる可能性がある。契約変更によ り新たに生じる又は変化する権利及び義務が強制力のあるものかどうかを判定するにあたっては、契約条件並びにすべての関連する事実及び状況を考慮する。

123. 第 30 項(1)及び(2)の要件のいずれも満たす契約変更は、追加的に約束した財又はサー ビスに関する独立した契約を締結した場合と取引の実態に相違がないため、当該契約変更 を独立した契約として処理する。

124. 契約変更を独立した契約として処理する要件の 1 つとして、変更される契約の価格が、 追加的に約束した財又はサービスに対する独立販売価格に特定の契約の状況に基づく適 切な調整を加えた金額分だけ増額されること(第 30 項(2)参照)がある。このような調整 としては、例えば、類似の財又はサービスを新規顧客に販売する際に生じる販売費を企業 が負担する必要がないため、顧客が受ける値引きについて独立販売価格を調整することが ある。

125. 契約変更が独立した契約として処理されない場合で、第 31 項(1)の要件に該当するとき には、当該契約変更は既存の契約の後で交渉され、新たな事実及び状況に基づくものと考 えられるため、当該契約変更を将来に向かって会計処理し、過去に充足した履行義務に係 る収益を修正しない。また、第 31 項(2)の要件に該当するときには、既存の契約で約束し た財又はサービスとは別個の追加的な財又はサービスを移転しないため、履行義務の充足 に係る進捗度及び取引価格を変更し、当該変更による累積的な影響に基づき、契約変更日 において収益の額を修正する。

126. 契約変更から生じる取引価格の変更と、変動対価の見積りの変更は、異なる経済事象の 結果である。変動対価の見積りの変更は、契約における取引開始日に識別され合意された 変数の変化から生じるものであるが、契約変更から生じる取引価格の変更は、契約の当事 者間での独立した事後的な交渉から生じるものである。

(4)履行義務の識別

127. 顧客との契約は、通常、企業が顧客に移転することを約束した財又はサービスを明示す る。しかし、顧客との契約には、契約締結時に、企業が財又はサービスを移転するという 顧客の合理的な期待が生じる場合において、取引慣行、公表した方針等により含意されて いる約束が含まれる可能性があり、顧客との契約において識別される履行義務は、当該契 約において明示される財又はサービスに限らない可能性がある。

128. 第 32 項(2)の定めは、特性が実質的に同じ複数の別個の財又はサービスを提供する場合 に、当該複数の別個の財又はサービスを単一の履行義務として識別するものであり、当該 別個の財又はサービスを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別す ることは、コストと比較して便益が小さいため設けている。この定めは、例えば清掃サー ビス契約のように、同質のサービスが反復的に提供される契約等に適用できる場合がある。

(別個の財又はサービス)

129. 約束した財又はサービスには、例えば、次のものがある。 - 26 - (1) 企業が製造した財の販売(例えば、製造業者の製品) (2) 企業が購入した財の再販売(例えば、小売業者の商品) (3) 企業が購入した財又はサービスに対する権利の再販売(例えば、企業が再販売する チケット) (4) 契約上合意した顧客のための作業の履行 (5) 財又はサービスを提供できるように待機するサービス(例えば、利用可能となった 時点で適用されるソフトウェアに対する不特定のアップデート)あるいは顧客が使用 を決定した時に顧客が財又はサービスを使用できるようにするサービスの提供 (6) 財又はサービスが他の当事者によって顧客に提供されるように手配するサービス の提供(例えば、他の当事者の代理人として行動すること) (7) 将来において顧客が再販売する又はその顧客に提供することができる財又はサー ビスに対する権利の付与(例えば、小売店に製品を販売する企業が、当該小売店から 製品を購入する個人に追加的な財又はサービスを移転することを約束すること) (8) 顧客に代わって行う資産の建設、製造又は開発 (9) ライセンスの供与 (10) 追加の財又はサービスを取得するオプションの付与(当該オプションが重要な権利 を顧客に提供する場合)

130. 顧客は、財又はサービスから単独で便益を享受することができる場合や、顧客が容易に 利用できる他の資源を組み合わせることによってのみ財又はサービスから便益を享受す ることができる場合がある(第 34 項(1)参照)。容易に利用できる資源とは、企業又は他の 企業が独立して販売する財又はサービス、あるいは、顧客が企業から既に獲得した資源(企 業が契約に基づき既に顧客に提供している財又はサービスを含む。)又は他の取引若しく は事象から既に獲得した資源である。 さまざまな要因により、財又はサービスから単独で顧客が便益を享受できること、ある いは、財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享 受することができることが示される可能性がある。例えば、それは、企業が特定の財又は サービスを通常は独立して販売するという事実により示される可能性がある。

131. 財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができるかどうか(第 34 項(1)参 照)を判定するにあたっては、顧客が当該財又はサービスをどのように使用するかは考慮 せず、当該財又はサービス自体の特性を考慮する。そのため、たとえ顧客が企業以外から 容易に利用できる資源を獲得することが契約によって制限されていたとしても、そのよう な契約上の制限は考慮しない。

(5)履行義務の充足による収益の認識

132. 第 37 項における支配の移転は、財又はサービスを提供する企業、あるいは当該財又は サービスを受領する顧客のいずれの観点からも判定でき、企業が支配を喪失した時、又は顧客が支配を獲得した時のいずれかとなる。通常、両者の時点は一致するが、企業が顧客 への財又はサービスの移転と一致しない活動に基づき収益を認識することがないよう、顧 客の観点から支配の移転を検討する。

133. 財又はサービスは、瞬時であるとしても、受け取って使用する時点では資産である。資 産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどす べてを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受することを妨 げる能力を含む。)であり(第 37 項参照)、資産からの便益とは、例えば、次の方法により 直接的又は間接的に獲得できる潜在的なキャッシュ・フロー(インフロー又はアウトフロ ーの節減)である。 (1) 財の製造又はサービスの提供のための資産の使用 (2) 他の資産の価値を増大させるための資産の使用 (3) 負債の決済又は費用の低減のための資産の使用 (4) 資産の売却又は交換 (5) 借入金の担保とするための資産の差入れ (6) 資産の保有

(一定の期間にわたり充足される履行義務)

134. 多くのサービス契約では、サービスから生じる資産を顧客が受け取るのと同時に消費し ており、企業の履行により生じた資産は瞬時にしか存在しない。これは、当該サービス契 約において、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受す る(第 38 項(1)参照)ことを意味する。

135. 第 38 項(1)の要件は、企業の履行によって顧客が便益を直ちに享受しない契約に適用さ れることを意図しておらず、企業の履行によって仕掛品等の資産が生じる又は資産の価値 が増加する契約については、第 38 項(2)又は(3)の要件を満たすかどうかを判定する。

136. 第 38 項(2)の要件を満たすかどうかを判定するにあたっては、第 37 項の定めを考慮す る。企業が顧客との契約における義務を履行することにより生じる資産又は価値が増加す る資産は、有形又は無形のいずれの場合もある。例えば、顧客の土地の上に建設を行う工 事契約の場合には、通常、顧客は企業の履行から生じる仕掛品を支配する。

137. 一部の財又はサービスについては、第 38 項(1)又は(2)の要件を満たすことが困難な場 合があるため、第 38 項(3)の要件を定めている。

138. 第 38 項(3)の要件において、企業が顧客との契約における義務を履行することにより、 別の用途に転用することができない資産が生じることのみでは、顧客が資産を支配してい ると判断するのに十分ではないため、企業が顧客との契約における義務の履行を完了した 部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していることも要件として追加して いる。これは、一般的な交換取引に係る契約において、財又はサービスに対する支配を顧 客が獲得した場合にのみ、顧客が支払義務を負うことと整合している。

(履行義務の充足に係る進捗度)

139. 履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合にのみ、一定の期間に わたり充足される履行義務について収益を認識する(第 44 項参照)。履行義務の充足に係 る進捗度を合理的に見積ることができない場合とは、進捗度を適切に見積るための信頼性 のある情報が不足している場合である。

3.収益の額の算定

(1)取引価格の算定

(変動対価)

140. 変動対価の額の見積りにあたっては、最頻値又は期待値による方法のいずれかのうち、 企業が権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方法を用いる(第 51 項参 照)。最頻値は、契約において生じ得る結果が 2 つしかない場合(例えば、割増金の条件を 達成するか否かのいずれかである場合)には、変動対価の額の適切な見積りとなる可能性 がある。期待値は、特性の類似した多くの契約を有している場合には、変動対価の額の適 切な見積りとなる可能性がある。

141. 変動対価の額の見積りに使用する情報は、通常、入札や提案等の過程及び財又はサービ スの価格設定において経営者が使用する情報と同様のものである(第 52 項参照)。

142. 最頻値による方法については、実務上、可能性の低いシナリオの結果を数値化する必要 はない。また、期待値による方法についても、実務上、企業が大量のデータを有し、多く の結果を識別できる場合であっても、複雑なモデルを用いてすべてのシナリオの結果を考 慮する必要はない。一定数のシナリオの結果及びその確率が入手できる場合には、生じ得 る結果の分布を合理的に見積ることができることが多い(第 51 項及び第 52 項参照)。

143. 変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上 された収益の著しい減額が発生しない「可能性が高い」(第 54 項参照)とは、計上された 収益の著しい減額が発生しない可能性が発生する可能性よりも高いという状況に比べ、発 生しない可能性が著しく高い状況を示し、IFRS における“highly probable”と同程度の 可能性を示している。 なお、公開草案では、IFRS 第 15 号における“highly probable”については、「可能性 が非常に高い」との表現を用いていた。公開草案に寄せられたコメントの中には、当該表 現が示す可能性の程度を明確にすべきであるとの意見があった。当該意見を踏まえ、「可能 性が非常に高い」を「可能性が高い」に変更しているが、当該変更は、我が国の他の会計 基準等で用いられている表現への変更であり、公開草案から可能性の程度を下げることを 意図したものではない。 (契約における重要な金融要素)

144. 重要な金融要素は、信用供与の約束が契約に明記されているか、契約の当事者が合意し た支払条件に含意されているかにかかわらず、存在する可能性がある(第 56 項参照)。

(顧客に支払われる対価)

145. 顧客に支払われる対価は、顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者に企業 が支払う対価を含む(第 63 項参照)。例えば、企業が販売業者又は流通業者に商品又は製 品を販売し、その後に当該販売業者又は流通業者の顧客に企業が支払を行う場合がある。

(2)履行義務への取引価格の配分

(独立販売価格に基づく配分)

146. 独立販売価格の最善の見積りは、企業が同様の状況において独立して類似の顧客に財又 はサービスを販売する場合における当該財又はサービスの観察可能な価格である。財又は サービスの契約上の価格や定価は、当該財又はサービスの独立販売価格となる場合がある が、そのように推定されるわけではない。 独立販売価格を直接観察できない場合には、第 65 項の定めと整合するような取引価格 の配分となる独立販売価格を見積る。

(値引きの配分)

147. 第 71 項(1)から(3)の要件のすべてを満たす場合を除き、契約におけるすべての履行義 務に対して値引きを比例的に配分すること(第 70 項参照)は、基礎となる別個の財又はサ ービスの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分することと 整合している。

(変動対価の配分)

148. 契約において約束された変動対価は、契約全体に帰属する場合もあれば、次のいずれか のように契約の特定の一部に帰属する場合(第 72 項参照)もある。 (1) 契約における履行義務のうち 1 つ又は複数(ただし、すべてではない。)(例えば、 割増金の受取りが、企業が約束した財又はサービスを所定の期間内において移転する ことを条件とする場合) (2) 第 32 項(2)に従って識別された単一の履行義務に含まれる 1 つ又は複数の別個の財 又はサービス(例えば、2 年間の清掃サービスの 2 年目において約束された対価が、 所定の物価上昇率の変動に基づき増額される場合)

(3)取引価格の変動

149. 取引価格は、契約における取引開始日後にさまざまな理由で変動する可能性があり、こ れには、不確実な事象が確定することや他の状況の変化により、約束した財又はサービス の顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を変動させるものが含まれ る(第 74 項参照)。

4.契約資産、契約負債及び債権

150. 対価に対する企業の権利が無条件である(第 12 項参照)とは、当該対価を受け取る期限 が到来する前に必要となるのが時の経過のみであるものをいう。例えば、受け取る対価に 対する現在の権利を有している場合には、当該金額が将来において返金の対象となる可能 性があるとしても、債権を認識する。 対価に対する無条件の権利は、通常、履行義務を充足して顧客に請求した時に生じる。 ただし、顧客への支払の請求は企業が対価に対する無条件の権利を有することを示すもの ではなく、対価を受け取る期限が到来した時に対価に対する無条件の権利を有する場合が ある。

(IFRS 第 15 号の定め及び結論の根拠を基礎としたもの以外のもの)

1.収益の認識基準

(1)契約の結合

151. 契約の結合の定めにおける関連当事者(第 27 項参照)とは、企業会計基準第 11 号「関 連当事者の開示に関する会計基準」に定める関連当事者をいう。

(2)履行義務の充足による収益の認識

152. IFRS 第 15 号では、収益の認識時期を、財又はサービスに対する顧客の支配の獲得によ り判断するとされている(第 35 項参照)。審議の過程では、この支配の移転の考え方につ いて、工事進行基準は活動を基礎として業績を測定するものであり支配の移転の考え方と 相容れず、基準内で整合性が図られていないのではないかとの懸念を示す意見が聞かれた。 この点、IFRS 第 15 号の開発過程において、市場関係者から、工事進行基準の適用が認 められない場合には工事契約に関する有用な情報が提供されなくなるとの懸念が寄せら れたことを受けて、IASB は支配の移転の考え方を維持しつつ、一定の期間にわたり充足さ れる履行義務の枠組みの下で工事契約への具体的な適用を整理したとされている。 当委員会では、これらの IFRS 第 15 号の開発の経緯及び国際的な比較可能性を考慮して、 工事契約についても IFRS 第 15 号における会計処理を取り入れることとした。

(履行義務の充足に係る進捗度)

153. IFRS 第 15 号では、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないが、 当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合には、履行義 務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる時まで、原価回収基準により処理す ることとされている(第 45 項参照)。審議の過程では、この取扱いに関して、工事契約に係る財務指標を歪め期間比較を困難にするおそれがある等の意見が聞かれたが、履行義務 の充足が進捗しているという事実を反映するために一定の額の収益を認識すべきとの IFRS 第 15 号における論拠を否定するまでには至らないと考えられ、IFRS 第 15 号におけ る会計処理を取り入れることとした。

154. 工事契約適用指針では、「工事進行基準の適用要件を満たすと判断された工事契約につ いて、事後的な事情の変化により成果の確実性が失われた場合には、その後の会計処理に ついては工事完成基準を適用することになる。」とされていた。審議の過程で、本会計基準 において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合にのみ、一定 の期間にわたり充足される履行義務について収益を認識する(第 44 項参照)こととして いるが、事後的に当該進捗度を合理的に見積ることができなくなった場合の取扱いを示す ことを求める意見が聞かれた。 この点、本会計基準では、履行義務の充足に係る進捗度は各決算日に見直す(第 43 項参 照)こととしており、当該進捗度を合理的に見積ることができるか否かについても各決算 日に見直すことになる。当該見直しにおいて、契約における取引開始日後に状況が変化し、 履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができなくなった場合で、当該履行義 務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれるときには、その時点から原価 回収基準により処理する(第 45 項参照)。

2.表 示

155. 審議の過程で、サービスの提供による収益や企業が代理人に該当する場合など、本会計 基準に従って認識される収益の表示科目を明確化すべきであるという意見が聞かれた。こ の点、現在、表示科目として一般的に用いられている売上高は、他の関連する法令等にお いても広く用いられているものであり、仮にその名称を変更する場合には影響が広範に及 ぶこと等から、収益の表示科目について、注記事項と合わせて本会計基準が適用される時 (平成 33 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首)まで(準備期間を 含む。)に検討することとした。なお、本会計基準を早期適用する場合には、我が国の実務 において現在用いられている売上高、売上収益、営業収益等の科目を継続して用いること ができるものとする。 また、IFRS 第 15 号に定められている損益計算書における顧客との契約から生じる収益 と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)の区分表示の要否についても、同じく本会計 基準が適用される時までに検討することとした。

3.注記事項

156. IFRS 第 15 号の注記事項の定めは、収益に関する財務諸表利用者の理解に役立つことを 目的として、従来の会計基準と比較して拡充されており、比較可能性を改善するものと考 えられる。一方、当該注記事項の拡充に対して、我が国の市場関係者からは、IFRS 第 15 号 - 32 - の開発段階から、特に契約残高や残存履行義務に配分した取引価格等の一部の定量的な情 報の注記について、実務上の負担に関する強い懸念が寄せられており、最終化された IFRS 第 15 号の注記事項の定めに対しても引き続き懸念を示す意見が聞かれている。 本会計基準を早期適用する段階では、各国の早期適用の事例及び我が国の IFRS 第 15 号 の準備状況に関する情報が限定的であり、IFRS 第 15 号の注記事項の有用性とコストの評 価を十分に行うことができないため、必要最低限の定めを除き、基本的に注記事項は定め ないこととし、本会計基準が適用される時(平成 33 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年 度及び事業年度の期首)まで(準備期間を含む。)に、注記事項の定めを検討することとし た。 また、本会計基準を早期適用する場合には、企業の主要な事業における主な履行義務の 内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記 することとした(第 80 項参照)。企業が履行義務を充足する通常の時点とは、例えば、商 品又は製品の出荷時、引渡時、サービスの提供に応じて、あるいはサービスの完了時をい う。当該注記を重要な会計方針の注記として開示すべきか否かについては、本会計基準が 適用される時までに他の注記事項の検討と合わせて整理するが、実務の混乱を避けるため、 早期適用時においては個別の注記として開示することとした(第 80 項参照)。

Ⅳ.適用時期等

1.適用時期

157. 収益認識に関する会計処理は日常的な取引に対して行われるものであり、本会計基準の 適用により従来と収益を認識する時期又は額が大きく異なる場合、企業において経営管理 及びシステム対応を含む業務プロセスを変更する必要性が生じる可能性があり、新たな会 計基準又は改正された会計基準の公表における通常の準備期間に比して、より長期の準備 期間を想定して適用時期を定める必要があると考えられる。よって、本会計基準は、平成 33 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(第 81 項参照)。

158. また、IFRS 又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業が、IFRS 第 15 号又は Topic 606 を適用すると同時に、当該企業の個別財務諸表に対して本会計基準を適用する ニーズが聞かれることから、平成 30 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度 の期首から本会計基準を適用することができることとした(第 82 項参照)。 さらに、12 月末を決算期末とする IFRS 又は米国会計基準を連結財務諸表に適用してい る企業のニーズを勘案し、平成 30 年 12 月 31 日に終了する連結会計年度及び事業年度か ら平成 31 年 3 月 30 日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連 結財務諸表及び個別財務諸表から本会計基準を適用することができることとした。この場 合、比較可能性を確保する観点から、早期適用した連結会計年度及び事業年度の翌年度に 係る四半期(又は中間)連結財務諸表及び四半期(又は中間)個別財務諸表においては、 - 33 - 早期適用した連結会計年度及び事業年度の四半期(又は中間)連結財務諸表及び四半期(又 は中間)個別財務諸表について、本会計基準を当該年度の期首に遡って適用することとし た(第 83 項参照)。

2.経過措置

159. IFRS 第 15 号及び Topic 606 においては、適用初年度における実務上の負担を軽減する ために、さまざまな経過措置が設けられている。本会計基準においても、適用初年度にお ける実務上の負担を軽減するため、IFRS 第 15 号及び Topic 606 を参考とした経過措置を 定めることとした(第 84 項から第 86 項参照)。 また、IFRS 又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社) が当該企業の個別財務諸表に本会計基準を適用する場合には、当該企業における実務上の 負担を軽減するため、IFRS 第 15 号又は Topic 606 のいずれかの経過措置を適用すること ができるとの定めを本会計基準に含めることとした。さらに、IFRS を連結財務諸表に初め て適用する企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に本会計基準を適用す る場合には、当該企業における実務上の負担を軽減するため、IFRS 第 1 号における収益に 関する経過措置を適用することができるとの定めを本会計基準に含めることとした(第 87 項参照)。

160. 第 156 項に記載のとおり、本会計基準を早期適用する段階においては、基本的に注記事 項は定めないこととした。契約資産と債権については、貸借対照表において区分表示せず、 かつ、それぞれの残高を注記しないことができることとし(第 88 項参照)、当該区分表示 及び注記の要否は、本会計基準が適用される時(平成 33 年 4 月 1 日以後開始する連結会 計年度及び事業年度の期首)まで(準備期間を含む。)に検討することとした。

161. 本会計基準では、取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を 得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)をいう(第 47 項参 照)としており、我が国の売上に係る消費税等は、第三者に支払うために顧客から回収す る金額に該当することから、本会計基準における取引価格には含まれない。 公開草案に対して、非課税取引が主要な部分を占め、消費税等の負担者と認められる等 の理由により、消費税等の税込方式を採用する企業から、税込方式を容認すべきであると の意見が寄せられた。審議の結果、税込方式を認める場合、本会計基準における取引価格 の定義に対する例外を設けることになり、また非課税取引が主要な部分を占める企業にお ける売上に係る消費税等の額は重要性に乏しい等の理由により、代替的な取扱いを定めな いこととした。 ただし、本会計基準の適用初年度において、消費税等の会計処理を税込方式から税抜方 式に変更する場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として、過去の期間に消 費税等が算入された固定資産等の取得原価を修正することとなるが、相当の期間にわたり 情報を入手することが必要となり、実務的な対応に困難を伴うことが想定されるため、適用初年度の期首より前までに消費税等が算入された固定資産等の取得原価から消費税等 相当額を控除しないことができることとした(第 89 項参照)。 本会計基準の公表による他の会計基準等についての修正 本会計基準の公表により、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下 線は追加部分、取消線は削除部分を示す。)。 企業会計基準第 9 号「棚卸資産の評価に関する会計基準」 第 31 項 棚卸資産には、未成工事支出金等、注文生産や請負作業についての仕掛中のものも含 まれる。なお、工事契約及び受注制作のソフトウェアに係る収益及びその原価に関する 施工者の会計処理及び開示については、企業会計基準第 15 号「工事契約に関する会計 基準」企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」において定めている。